
そもそも大地の芸術祭に行ってみようと思ったのは、写真の福武ハウス 2009を見たかったからだ。福武ハウスは、妻有にアートマーケットを作ろうというプロジェクトで、さまざまなギャラリーが参加し、多くのアーティストの作品が楽しめる。芸術祭の総合プロデューサーでもある福武總一郎が仕掛けているので、それもそのはず。
福武氏は福武書店(現ベネッセ)の会長さんで、“持つ者”として芸術家を支援しまくっている。瀬戸内海に浮かぶ直島なんてさながら“ベネッセ島”みたいなところで、美術館のみならず、島内のいたるところに芸術作品が点在していてとても面白い。同氏は個人で芸大に多額の寄付を贈ったりもしているようだ。
早速話がそれたw。出展アーティストの中にヘレン・ファン・ミーネという1人の作家がいる。学生の頃、たしかセゾン系のギャラリー(銀座だったような……)で見て以来、頭の中に不思議とずっとへばりついているアーティストだ。少年や少女の写真を撮り続けており、不安定で艶っぽい表情に引き込まれていく。偶然ヘレンの展示室には誰もいなかったので、ずっとじっと作品世界を楽しめた。撮影が禁止されていたので福武ハウスは外観のみ。

続いては、本間純氏の「森」という作品。かまぼこ型のガレージの中にところ狭しと並べられた鉛筆は、周辺地域から集められたもの。鉛筆の向こう側には本物の森が見える。
アーティストがその地域の中で“地の利”を活かして制作することは珍しいことではない。だけど、通常そういった試みは開かれた場所(美術館とか公園、町の中とか)でやるものだ。作品は山の中腹あたりにぽつんとある。「この小屋は作品?」なんて戸惑うかもしれない。


このエントリーの最後は、李在孝(イ・ジュヒョ)の「0121-1110=109061」という作品。木々に囲まれた空間に、大きな3つの球体が置かれている。近づくとそれは木材の集合体であることがわかる。生きている木が木材になるとすごく印象が違って、周囲の景色と強いコントラストを放つ。