
ぼんさん(猫)が家に来るまで、「家に帰る」ということが大変面倒くさいことだった。
わりと遅くまで仕事をして、その後、浴びるように酒をあおるか、ファミレスで人づてに頼まれた・相談された仕事以外の仕事を片付け、朝にベッドに潜り込むのが日常だった。
1日が24時間というのは嘘で、たとえば睡眠時間が6時間の人なら1日は18時間、8時間の人なら1日は16時間しかない。だから、睡眠時間を減らせば減らすほど1日は長くなる! と思って、実際そうしていた。
そんなガマンを続けていると、休日になると途端にカラダが動かなくなる。まぁそれもいいし、目が覚めたら結局また編集部に行くんだから、むしろ目が覚めた時点で編集部にいた方が楽だよな、帰るってこと自体がわずらわしいよなとか、そんな調子であった。
で、猫と暮らすようになった。

暮らすようになると、ゴハンをあげねばならないので家に帰るしかない。カギをあけるとトトトッと狭い部屋のどこかから迎えに来てくれるので、悪い気はしない。ごめん、嘘ついた。すごいかわいいんだこれが、悪い気どころか超うれしい、ラブ。
酒を吞んでも終電を意識するようになったし、頼まれごとや相談ごとは自分で処理するのではなく、人と人をつなげることでさばいていくことが多くなった。家に帰ったら、ぼんさんのウンチを片付けねばならないのだ。ファミレスで黙っていてもコーヒーが出てくる生活から抜け出さねばならない。
そんなわけで前よりも、少し人間らしい生活になったのかなぁと思ってはいるんだけど、どうやらまだ足りないらしい。周りにはずっと動いている人が多いせいか、あまり自覚がないものの、なんだか最近、ワーカホリックと言われることが多い。もっと生活の中心をずらさないといけないようだ。平日に人間らしい生活を送れるよう、いっちょ模索してみるか。